個性派銭湯が アツい! 若手経営者がユニーク企画

都市部を中心に、ユニークに生まれ変わった銭湯が存在感を増している。家業を継いだり新規参入したりした若手経営者らが、工夫を凝らしたイベントや情報発信で家族連れなど新たなファンを獲得。銭湯の経営環境は厳しさを増しているが、関係者らは「若手の発想で銭湯文化を守り、さらに広げてほしい」と期待を寄せる。(中川竹美)

大阪市住吉区の「朝日温泉」は、ユニークなイベントで知られる銭湯。浴場で楽器演奏する「銭湯ライブ」や、風呂おけやタオルで様々な競技をする「オフロンピック」などの企画が人気だ。3代目の田丸正高さん(37)が発案し、年1回程度開き、常連客や子ども連れ客ら数十人が集まり盛り上がりを見せる。

田丸さんは2007年に家業の銭湯を継いだ。当初は客足減少で廃業も視野にあったが、工夫で苦境をはね返した。スタッフが客と同じ目線に立つよう番台をフロントに改修。風呂上がりの休憩スペースも新設し、入りにくいと敬遠しがちな女性客や銭湯になじみの無い新規客を呼び込んだ。

10年ほど前からは「銭湯の魅力をもっと広く知ってもらいたい」とライブなど独自イベントも開催。SNSで発信すると、懐かしさや珍しさで遠方からの来客も増加。1日80~100人だった利用者は現在同150~200人に膨らんだ。

18年からは、常連客や子連れで訪れた客からの寄付で、子どもが無料で入浴できるイベントを定期開催。小さいころから銭湯に親しんでもらう狙いだ。田丸さんは「銭湯は地域の重要な交流の場。銭湯に親しむ子どもを地域で育み、銭湯文化を継承したい」と話す。

1928年創業の「昭和湯」(同市東淀川区)は約3年前、近くにゲストハウスを開設し、宿泊客が無料で銭湯を使えるサービスを始めた。日本文化としての銭湯を体験できるとしてインバウンド(訪日外国人)の関心も高く、月に数組の欧米系観光客らが利用する。全体の利用者は約10年前は1日100人程度だったが、現在は同170~200人に拡大した。

代表の森川晃夫さん(43)は「銭湯は非日常を体験する場になりつつある」と話す。7月末には女性客獲得に向け、湯船にバラを浮かべたり格安料金でマッサージしたりする1日限定イベントを開催。インターネットで知った新規客ら100~150人が利用した。

銭湯経営に新規参入した若手も活躍している。創業100年超の老舗「サウナの梅湯」(京都市下京区)を運営する湊三次郎さん(29)は15年、梅湯が廃業の危機と聞き、「銭湯文化を無くしてはならない」と前経営者から事業を継いだ。

湊さんは老朽化したボイラーを改良し営業時間も延長。告知や近所の話題を載せた「梅湯新聞」を定期的に作り、浴場で映画鑑賞や落語会も開いた。SNSで発信すると、認知度が上昇し、当初1日約60人だった利用者は約190人に増えた。

現在は京都市大津市で計4軒の銭湯を経営。銭湯経営に関心を持つ若者を店長に起用するなど、担い手育成にも力を注ぐ。「一軒でも多く廃業の危機にある銭湯を存続させたい」と、銭湯経営のモデル確立を目指す。

銭湯愛好家で銭湯に関する著作を持つ松本康治さん(56)は「銭湯経営はノウハウが体系化されていない。存続させるには、銭湯が好きな若者と経営が苦しい銭湯をつなぐ仕組みを作ることが重要だ」と話している。

40年で8割減、客数減少・後継者不足など要因

銭湯の廃業の流れに歯止めがかからない。厚生労働省によると、入浴料金の統制を受ける一般公衆浴場は2017年度末時点で約3700軒。統計を取り始めた1977年度(約1万7000軒)から約8割減少した。

 

主な要因は後継者不足と客数減少による経営不振など。大阪府内の銭湯業者らでつくる「大阪府公衆浴場組合」(大阪市天王寺区)の山谷昌義事務局長は「府内では毎月1軒のペースで廃業している」と明かす。

一方で、災害時などに銭湯が果たす役割は大きい。18年6月に大阪府北部で起きた地震では、昭和湯など大阪市内の銭湯57軒が被災者向けに無料開放を実施。市によると10日間で1000人超の利用があった。市は今年2月から、民間事業者と組み市内の銭湯情報を網羅するデータベース作成を始めた。

社団法人「日本銭湯文化協会」(東京・千代田)の町田忍理事は「銭湯は現在、近隣住民が触れ合える数少ない場所。内風呂がある人にも銭湯に来てもらうために、『非日常的』空間としての魅力を高める工夫が必要だ」と話している。