恐竜博士になれる大学 原野から生まれた専門講座

恐竜博士になりたい――。そんな子供たちの夢がかなう教育環境が日本でも整ってきた。専門家が奔走し、岡山理科大学は恐竜の博士号を取れる日本初の専門コースを開講。福井県などでも研究拠点が次々とできた。

「次はあの骨を持ってきて」「そこじゃないよ」。7月上旬、岡山市立博物館「岡山シティミュージアム」の展示室に掛け声が響く。岡山理科大教授の石垣忍(64)が見守るなか、手際よく体長約10メートルのタルボサウルスの骨を組み上げていくのは同大の「恐竜・古生物学コース」の学生らだ。

2014年開講の同コースは様々な側面から恐竜を学べる。学生は豊富な標本を使った授業で化石から恐竜の姿や生態を推測する目を養う。教員のモンゴルでの発掘調査に同行することもある。

石垣は4人いる専属教員の一人で、コース開設の仕掛け人だ。学生時代の石垣は恐竜と無縁の地質学専攻だった。20代後半で青年海外協力隊に応募し、モロッコの原野で恐竜の足跡化石を調査したのが恐竜との出会いだ。現地の村人たちに調査内容を解説した経験から、石垣は「研究成果をみんなと共有することがいかに大事か」を実感した。その感覚が現在のコースの運営にも生きる。

石垣が次世代の育成のために力を入れるもう一つの活動が「恐竜学博物館」だ。大学の一角にある手作りの博物館は18年春の開館後約2万人が訪れた。「裾野の広い学問は栄える。大学としてそんな恐竜学を目指す」

博物館運営での強力な「助っ人」が、恐竜の骨格標本制作を請け負うゴビサポートジャパン(群馬県神流町)代表の高橋功(70)だ。岡山シティミュージアムに展示した骨格標本の作製も高橋が請け負った。現地で発掘調査にも携わる。

研究者たちに「功さん」と呼ばれ親しまれる高橋は、80年代から群馬県中里村(現・神流町)の恐竜博物館「恐竜センター」の運営に携わってきた。高橋の家に標本が届くため、自然と高橋家は若い研究者たちの集会所のようになった。その若者らは現在大学の教員などとして活躍している。

「みんなが日本の恐竜学をけん引してくれるといい」と高橋は見守る。国産の恐竜博士を育てる土壌は確実に整いつつある。

=敬称略

(出村政彬)