ギグエコノミーの担い手たち フリーランス「ゆるく団結」 高付加価値・高収入めざす

4時間かけて書いた原稿の報酬は、たった800円。副業としてウェブライターを始めた佐々木ゴウ(30)の時給は、都営バスの運賃よりも安かった。

佐々木はNTTコミュニケーションズに3年間勤めた後、ネット通販のコンサルティングを手掛ける企業に転職。副業を始めたのは、それから半年後のことだ。ウェブ制作など色々な仕事を貪欲に受注した結果、ライター業が性に合った。

とはいえ書くのが遅く、単価も安い。計算してみると、月収は6千円。一念発起して、仕事の単価を上げる努力をした。ライティングの基礎を独学で学び、書くスピードを上げる。発注元に企画や構成のアイデアも出すと重宝された。それから2年半。今の月収は100万円を超える。

発注元の信頼を得た佐々木のもとには、今やプロジェクト単位で依頼が来る。1人では手が回らない。そこで思いついたのが、大型案件の受注を目指したオンラインコミュニティーの設立だ。

佐々木が主導する形で、フリーランスのライターなど800人が参加する「ライター組合」が立ち上がったのは5月のこと。目的は会員がスキルアップを図り、連携して付加価値の高い仕事をすることにある。

組合を設立してから3つの大型案件を手掛け、そのうち1つは記事数が500本にもなった。担当するライターは70人。佐々木は「ここまで大きな規模の仕事を一括受注できる組織はほかにないはず」と胸を張る。

フリーランスとして明るく輝くために、「ゆるい団結」をする人たちが出てきている。ITエンジニアの工藤崇志(39)も旗振り役の一人だ。

「正社員ほど束縛されず、フリーランスだけど孤独にならない。そんな空間をつくりたかった」

こう語る工藤は18年4月、エンジニア、デザイナーなど15人が所属するUZUMAKI(東京・世田谷)を設立した。代表の工藤以外、社員はゼロ。他の14人はフリーランスか副業者としてプロジェクトに参画する。

工藤は15年2月にシステムエンジニアとして独立した。感じていたフリーランスの課題は、スキルを磨きにくいことだ。与えられる仕事をこなしているだけでは、新しい技術が身につかない。

そこで工藤は技術者が集まるイベントに積極的に参加した。ここでネットワークを作り、自らも「Swift読書勉強会」と呼ぶ勉強会を3年前から始めた。毎月2回程度開催し、20人ほどが集まる。この勉強会は今ではUZUMAKIの一つの事業になっている。

個人で自由な働き方をするフリーランスたち。だが本当にバラバラでは、思わぬトラブルに巻き込まれることがある。

「納品後、報酬が支払われず依頼主と連絡が取れなくなった」。プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会(東京・中央)がフリーランスで働く会員向けに昨年12月に実施したアンケートには、報酬の未払いについて、多くのコメントが寄せられた。

フリーランスの法的保護について、厚生労働省の担当者は「英国は企業雇用者に適用する保護をフリーランスにも拡大した。ドイツでは労働者類似の働き方として労働者と自営業者の中間に位置づけ、英国同様に保護を拡大している」と話す。

日本での議論は始まったばかりだ。

=敬称略