修学旅行で防災学ぼう 被災地、誘致に知恵 船で体験談聞く 復興紹介のAR

地震津波の被災者から体験談を聞くなどする「防災学習」を、修学旅行に取り入れてもらう試みが熊本県や東北地方の被災地で広がっている。街歩きしながら復興の様子を見学できるプログラムを用意するなどし、児童生徒に災害の記憶を伝えようと知恵を絞る。被災地では修学旅行客数が震災前などに比べて落ち込んでおり、客足の回復にもつなげたい考えだ。

「柱がバキバキと折れ、家が崩れていく音が聞こえた」。熊本県阿蘇村で5月、地元住民の女性が大きな揺れに襲われた瞬間を生々しく語ると、奈良県から訪れた中学生たちが真剣な表情でメモを取った。

同村では2016年4月の熊本地震で幅約200メートル、長さ約700メートルの斜面崩落が発生した。生徒たちは現在も残る崩落現場に案内され、地元ガイドから「皆さんの住む地域にも活断層はあり、危険な所があります」と説明を受けた。

熊本県は17年、修学旅行客向けの防災学習プログラムの策定を始めた。背景には修学旅行客の落ち込みがある。同県の17年の修学旅行宿泊客数は約3万2千人と地震前の約3割の水準にとどまった。県全体の宿泊客数が地震前の水準にほぼ戻ったのに比べ、回復の遅れが際立っていた。

そこで同県は、地震の爪痕を逆手に取り、学習に生かしてもらうことを発案。熊本市阿蘇市益城町、南阿蘇村の4市町村と協力してプログラムづくりに乗り出した。阿蘇市に続き、19年度から全4市町村で取り組みを始めた。

阿蘇市では18年度に11校、約800人の修学旅行客が訪れたという。県観光物産課の福田美央・主任主事は「防災学習をきっかけにまずは熊本に来てもらいたい。地震で学んだ教訓を伝える機会にしたい」と意気込みを語る。

東日本大震災で被害を受けた宮城県も修学旅行客の減少に悩み、修学旅行先を紹介するガイドブックや特設サイトを更新した。

13年からは防災学習ができる県内の40施設について、費用や見学にかかる所要時間、展示物などの内容を紹介している。スマートフォンのAR(拡張現実)アプリを使い、震災の発生直後から建物などの復興が進んでいく様子を見ながら街歩きできるツアーや、遊覧船に乗って語り部による震災の体験談を聞くプログラムも用意した。

宮城県の委託を受け、修学旅行先と学校をつなぐ、みやぎ教育旅行等コーディネート支援センターの小林由季さんは「震災から時間がたち、『今なら』と宮城を行き先として検討する学校も出てきた」と話す。

地震津波に加え、東京電力福島第1原子力発電所事故で被害を受けた福島県も、16年度から年約1000回にわたって担当職員や宿泊施設の関係者らを全国の学校に派遣するなどして修学旅行の誘致を本格化させている。スキーや観光に組み合わせて提案するのが「ホープツーリズム」と呼ぶ被災地ツアーだ。

参加は希望制で、数十人単位が多い。参加者のニーズに合わせ、帰還困難区域や津波に襲われた小学校を巡る。震災や事故の影響と復興に向かう福島の今を直接見てもらう狙いだ。18年度は小学生から大学生まで597人が参加した。

積極的な誘致が実を結び、福島県を訪れる修学旅行客は回復傾向にある。震災後の11年度に前年から8割減の約13万人に落ち込んだ修学旅行客数は、17年度に約49万人に戻った。うち高校生は約18万人を占め、震災前を上回っている。

県の担当者は「風評被害もあるが、福島の現状を正しく伝えるために情報発信だけでなく各地の学校を訪れて直接説明したことが功を奏した。まだまだ震災前には届かないが、徐々に理解してもらえている」と話している。

 

(鬼頭めぐみ)